2/6 グーグルの企業理念について
先日、ナショナルジオグラフィックで「潜入!グーグル社の舞台裏」
という番組が放送されていました。
グーグルは今や知らない人はいない、インターネットの検索サービスの
最大手企業です。
この企業の誕生の歴史から、現在の活動状況、また、社員たちの
変遷やグーグルのライバル企業の動向などを紹介した、見応えの
ある番組でした。
その中で、グーグルの企業理念のひとつとして有名な
「Don’t be evil(邪悪になるな)」
誕生のエピソードが紹介されていました。
この言葉は、「Gmail」を開発したPaul Buchheitという社員が
ホワイトボードの片隅に書き留めたことがきっかけで、グーグル
の企業理念のひとつに加わり定着したそうです。
番組では、この言葉を単なるお飾りのものにしていなかったという
エピソードが紹介されていました。
それは、ある日の広告会議でのこと。
とあるサービスを提供すべきかどうかについて議論がされていました。
そのサービスを提供することで、グーグルとしては売り上げを上げる
ことが出来ることにもなり、当然違法行為でも何でもないもの。
ですから、業績向上をメインに考えれば、当然実施すべきものでしょう。
しかしその時、ある社員が
「それは邪悪だ!」
と、机をたたいて怒鳴ったそうです。
会議場はしんと静まりかえり、そして、もう一度ユーザー視点から
その案件を検討しなおした結果、このサービスはよろしくない、
ということになり、その案件は棄却されたそうです。
このエピソードは、とても興味深いことを物語っていると思います。
つまり「企業理念を日常的に使っているか?」ということです。
よくあるのは、企業理念は、壁に貼ったり、ホームページに掲載したり、
朝の朝礼で唱和するだけのものでは本来はありません。
日常業務で徹底的に活用すべきものです。
その活用方法の中でも、一番の重要な使い方は、
「意志決定をするときの基準として使う」ことです。
今回のグーグルのエピソードでも、ある社員が、会議の席上で
理念のひとつを口にしたことで、会議の結果が180度変わりました。
こうやって企業理念を使うことが、重要なのでしょうね。
しかし実際には、企業理念を日々活用しながら、毎日の業務で
行う意志決定をしている、という現場は少ないと思います。
今回番組で見たこのエピソードは、企業理念が会社に浸透し、
活用されていることを示している、いい事例だと思います。
そんなグーグルも、中国でサービスを展開するに当たり、自ら掲げた
「Don’t be evil.」の理念を曲げざるを得ない状況に陥りました。
というのも、検索結果の内容に対して、中国政府の圧力に屈し、
検索結果の検閲を認めさせてしまったからです。
それは、誰にでも、自由に、ネット上のあらゆる情報にアクセスできる、
という権利を奪われることになりますから、この行為は邪悪なもの
と判断されても仕方がないこと。
そのことは、トップも自ら認め、邪悪に屈した旨の発言をしたそうです。
そしてそれは、多くの人々からバッシングを受けることになりました。
結局、そこまでして提供を始めたサービスも、残念ながら今年3月、
中国市場からの撤退を決めたそうですが、これら一連の話は、
理念を実際の現場に持ち込むやり方として、興味深い事柄を
示唆しています。
それは「企業理念を文字面通りに守るのは簡単ではない」でもあります。
まあ、当たり前と言えば当たり前ですが、馬鹿みたいに単純に、
一度決めた理念を守り続けることができたらどれほど楽だろうか。
しかし実際に、企業の規模が大きくなり、サービス範囲が広がって
くると、自分たちの理念通りでは立ち行かなくなってしまうという
ことも、起きない話ではありません。
しかし、そのときに「理想と現実は違うから」という一言で、
あっさり理念を貫くことをあきらめるのは、得策ではないと思います。
理念を貫いては前に進めない、という事情があったとしても、
だからといって、あっさり理念を捨てるのではなく、
「理念を貫くことににじり寄っていく」ことはとても重要な気がします。
実際、グーグル側も、中国で検閲入りのサービスを提供した後も、
粘り強く中国側に検閲撤廃の交渉を続けていたそうです。
中国進出による社会的メリットと、自社の理念を一方的に
貫くことで進出できない社会的デメリットを秤にかけて
まずは、いったん前に進むことを選び、その後理念実現の
ために相手に粘り強く交渉を続けていく。
そうやって、
「理念を忘れず、ぎりぎりまで理念実現に向けて頑張る」
というのは、「理想と現実は違うんだよ」といってあっさり理念を
捨て去ってしまっている人たちとは、根本的に違うと思います。
難しい問題です。。。
売上を上げることも大事ですが、そのために会社として間違った方向に
進んでしまうのは、後になって深いダメージを受けるのでしょうね。